油性マーカーによるロープの強度ダウン

ネットサーフィンをしていたら以下のような記事を見かけました。

 

https://www.blackdiamondequipment.com/en/qc-lab-can-i-use-a-sharpie-to-mark-the-middle-of-my-rope.html

(必要に応じグーグル翻訳で翻訳してください。意訳になるかも知れませんが)

 

ここには、なんと!『UIAAの実験結果ではマーカーでマークするとロープ強度が最大では50%落ちる』とあります。

また、『強度ダウンに関しては、ロープマーカーとして売り出しているものを含んでいる」とのこと。

 

異常値や外れ値(注1)の可能性はあるかも知れませんが50%ダウンとは驚きです。

また残念ながら市販のロープマーカーでさえある程度のダウンはするのですね。

 

但し、記事の後段では、UIAAの実験は実際に使用する環境とかけ離れた状態になっていることを批評しつつ、ブラックダイアモンド(ロープは販売していないメーカー)に所属する筆者が、自社の実験環境でロープをマーカーでマークして引っ張り実験をしたところ、常にノットで切れたと記述しています。

 

ロープの真ん中に目印をつけるクライミングと違い、レスキューではマーキングはあまりしませんが、端末に長さ等の情報を記載すると簡便な運用になり得ます。

 

私としては、あまり神経質になり過ぎる必要はないと思いますが、

 

1.ロープ専用マーカー以外の油性マーカーでのマーキングは避けた方がよいこと

2.これだけは避けるべきこととして、ノットが出来るであろう部分に油性マーカーでマーキングすること

 

としておきます。

 

たまにはネットサーフィンも悪くないですね。

 

なお、原典であろうUIAAの文章は以下です。

 

https://www.theuiaa.org/documents/safety/Notification_about_the_marking_of_ropes_by_climbers.pdf

 

注1:外れ値(ウィキペディア) 

外れ値(はずれち、英: outlier)は、統計学において、他の値から大きく外れた値のこと。 測定ミス・記録ミス等に起因する異常値とは概念的には異なるが、実用上は区別できないこともある。

ピケットアンカーについて

今回は、アンカーがない場合に地面に杭を打ち込んで支点を作るピケットアンカーについて考えました。

RQ3GEARの資料にピケットの記載があります、

 

https://rescuesource.com/wp-content/uploads/KT1750-Instructions.pdf

 

添付した資料のp6に以下の記載があります。

 

Important information

 

For reference, The US Army Rigging Manual

A single picket, either steel or wood, can be driven into the ground as an anchor. The holding power depends on the:

 

1. Diameter and kind of material used.

2.Type of soil.

3. Depth and angle in which the picket is driven.

4. Angle of the guy line in relation to the ground.

 

ピケットの保持力は、4つの要素が関わってくるとあります。要約すると

 

1.ピケットの直径と素材

2.地面の状態

3.打ち込む角度と深さ

4.地面と関連するガイラインの角度

 

1.は当然、直径が太いに越したことはないですが、通常アメリカでは1インチの太さのスチールものが多く使われています。

 

2.でおもしろいのは、濡れた地面の状態で係数をかけて調整する目安があり

 

 泥と砂利が混ざっているところでは、0.9掛け

 泥と砂が混ざっているところでは、0.5掛け

 

 で保持力を間引いて考えます。

 

3.打ち込む角度と深さですが

 

まず、深さは深い方が保持力が強いのは言うまでもありません。

そして角度は、15度から20度と言われます。

 

1本の場合、私の計算ではより倒せば倒すほど保持力は高くなります。

 

 

倒せば倒すほど、ひし形が大きくなり、ひし形の真ん中に線を引くとこの線が長くなることから、力の大きさが大きくなることがわかります。

 

但し、机上の計算だけではなく、実際は地面に打ち込むので、地面へ打ち込む深さを考えると、ピケットの角度を倒せば倒すほど浅くなり、保持力が弱まる傾向となります。

 

4.また、ピケットは複数本を打ち込み、ガイラインでくくり付け保持力を向上させるため、このガイラインと地面の作りだす角度も考慮する必要があります。

 

 

1本目のピケットの打ち込む角度を深くすればするほど、平らな地面では後方のガイラインの角度が大きくなり保持力は下がる傾向にあります。これは、3のひし形のところで述べたとおり、角度が狭いほど、保持力が大きくなり、角度が広いほど、保持力が小さくなるからです。

 

地面が平らかそれとも角度があるかなどを見極め、ガイラインの角度を考慮する理由もこれでわかります。

 

倒し角度について、15度と言われる理由は、これらの複数の要素を細かく把握して考慮、説明するより、15度と言っておき、杭の長さ(杭の長さと打ち込む深さ)と複数の杭を打ち込む幅の中さを決めておいた方が、現場での作り手が混乱しないもしくは、マニュアルとしての完成度が高いからではないかと想像します。

 

下降器の耐用年数 IDやMPD

下降器の耐用年数について調べてみました。

 

まずは、IDですが、説明書のp21に以下の記載があります。

 

『A.耐用年数 (特に設けていません』

https://www.alteria.co.jp/download/pdf/ifu/D020AA.pdf

 

MPDに関しては、見つかりませんでした。(英文の見落としの可能性は若干ありますが)

https://www.cmcpro.com/MPD-Users-Manual-Flipbook/files/assets/common/downloads/CMC%20MPD%20Manual.pdf

 

耐用年数というと、税務との絡みもあり、当社の顧問税理士に確認しましたが

 

『一般的な道具の耐用年数ではないため、耐用年数が列挙されているものの中に入ってこない

あえてその他扱いとするならば、工具とみれば8年、器具備品とみると15年となります。

但し、実情を考慮して、その他の資産の耐用年数を見て判断することになる』

 

とのことでした。

 

実際の話ですが、使用頻度や使い方によって差が出ることは当然ですが、うちが講習会で使っているMPDも古い物では7年近く経ちますがまだ現役で使えています。但し、耐用年数に関わらず、何が不具合があれば、即交換は言うまでもありません。

 

下降器系として見るならば、すでに自組織で耐用年数を定めているIDやストップと同じが妥当と思います。

構造がシンプルで丈夫なブレーキバーと比べると、少し違う気がします。

 

また、エイト環はどうかと考えたのですが、同じく構造のシンプルさがありますが、エイト環のすり減り具合の早さを考えると同じでもいいのかも知れないと思いました。

 

それでは、下降器としてでなく、プーリーとして見るならば、既存のプリーの耐用年数と同じなるのですが、プーリーもシンプルで丈夫な道具なので、これよりは短いと私は考えます。

 

最後に、ビレー器具として考えるなら、構造的にも540ビレーと同様の耐用年数でいいと思います。タンデムプルージックとは、布系と金属系の材質の違いがあるので、単純に比較は出来ないと考えるのが妥当でないでしょうか?

 

 

まとめると、すでに耐用年数を定めている他の道具との実情を見ながら、3年から5年が妥当だと私は思います。

長めでというならば、税法の工具と同じ扱いにして8年。

 

消防の皆さんにIDの耐用年数をどのようにして、何年と定めているのか聞きたいと思いました。

 

 

 

 

 

 

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